金相場は下値堅く推移していますが、上値も相変わらず重い展開が続いています。
テクニカル的には長期的に強気サインが点灯していると思うものの、ファンダメンタルズ的に金価格の上値を阻んでいるのはFRBによる利上げ示唆があるでしょう。
つまり現況は、FRBがドルの金利を上げればドルが強くなる➡金は強気になれない...という理屈なのでしょうが、これについて私なりに考えてみたいと思います。
まず、最近欧米の国債金利が急騰していたことを皆さんはご存知でしたか?
少なくともメディアではあまり取り上げられていなかったと思いますが、そのような内容こそ重要度が高いものです。
以下のチャートをご覧下さい。
<ドイツ10年国債金利>

<スペイン10年国債金利>

<米国10年国債金利>

国債金利と政策金利は直接的な関係はありませんが、間接的にはあります。
<政策金利>
これは中央銀行(またはFRBのようにそれに該当する期間)が通貨を発行し、それを市中の民間銀行に貸し出す時の金利です。
そして民間銀行はその上に更に金利を載せて個人や法人に貸し出し、金利の差分が民間銀行の利益です。
ですから、政策金利と民間人が預金する時の預金金利は近い数値に設定されます。
中央銀行と民間(預金)は、両方とも市中銀行の資金調達源だからです。
<国債金利>
一方で国債金利は需給関係で決まります。
買いたい人が増えれば金利は下がり、減れば上がります。
国家破産時を除けば、国債金利は一般に景気に左右されます。
好景気には株や不動産を買って利益を狙う投資家が増えるので国債は人気がなく、つまり国債金利は上がり易くなります。
逆に不景気になると株や不動産の利回りが低下するため、資金は国債に入り易くなります。
つまりこの時、国債金利は下がります。
纏めると、好景気では国債金利上昇、 不景気では国債金利下落...というのが(あくまで)一般的傾向です。
とは言え、わざわざあまり身近でない国債に投資する人がいるのは銀行預金よりも利率が高いからです。
新聞を読んでいると、国債の積極的な買い手としては概ね市中銀行群が取り上げられています。
つまり、中央銀行から借りたお金や私たちの預金が国債購入に回っているということになり、それは国債金利が常に政策金利よりも高い(国債金利>政策金利)という構図がないと成立しないことです。
国債の主な買い手が民間銀行であることを考えると、上述したように通常、国債金利は政策金利よりも高くなくてはならず、政策金利を上げると国債金利も上がることになります。
しかし、国債金利が上がると国庫金の支出は増えます。
例えば国家の借金(国債を買ってもらった総額)が1000兆円だとし、国債金利1%なら10兆円の利息ですが、2% になれば20兆円になり、一気に10兆円も国家の支出は増えることになります。
今回の焦点はFRBです。
米国政府の財政状況は最早言うに及びませんが、FRBは本当に利上げ出来るのでしょうか???
もしかすると「やはり利上げは出来ません」という声明がどこかでサプライズ(?)になり、ことが逆に回り始めるのではないか???
仮に金利材料ではないにせよ、以下の金相場のチャートを眺める限り、この先何かサプライズが潜んでいるように個人的には見えます。
最近のドル高騰で確かに金価格の上値は重かったのですが、その急騰ぶりの割に金の下値が浅かったことについては誰も指摘しないことも不自然な気がします。
【Spot Gold 月足】 あのドル高でこの程度の金安

金相場は、下降ウェッジの上抜け待ちです。